「子どもたちはパイソンを好きになれるか」
これは子どもたちがパイソンをはじめる時に抱く問題意識ではないでしょうか?
スクラッチでプログラミングの楽しさを知った子どもたちが、パイソンをはじめたことでプログラミングの興味を失ったり、プログラミングから離れたりしないか、と心配に思うこともあると思います。
子どもたちが、スクラッチなどのビジュアル言語からパイソンなどのテキスト型言語へステップアップする動きは、日本ではこれからはじまります。言語が変わることで子どもたちがどのように反応するかといった情報は、インターネット上には報告の事例は見当たりません。
ベルジェール2019年1月からクラスをはじめるところですので、確信を持って発信できるほどの知見は持ち合わせていませんが、9ヶ月間スクラッチを指導してきた経験と、生徒たちの学習の姿をイメージしてパイソンの教材を作成した経験から、「子どもたちはパイソンを好きになれるか」という問いに対する考えをお伝えしようと思います。
まずはじめに、ベルジェールキッズでのパイソンのカリキュラムについてお話します。
パイソンで学ぶこと
パイソンで学ぶことは、次のようなものがあります。
・言語仕様(文法)
・標準ライブラリー
・外部ライブラリー
・フレームワーク
ベルジェールでは、言語仕様と標準ライブラリーの一部を教えることにしています。プログラミング的思考を身につけるために必要最小限の範囲に絞っています。
子どもたちの理解度の判断
子どもたちのパイソンの理解度は、一般的にパイソンを「知っている」、「使える」、「使いこなせる」といった表現をすることもできますが、「範囲」と「深さ」にわけて考えることができます。
■範囲
・学ぶことの範囲
言語仕様(文法)
標準ライブラリー
外部ライブラリー
フレームワーク
・適用の範囲(アプリケーション)
ゲーム
数値計算
web
AI・・・
■深さ
・機能を使ったことがある
・リファレンスがあれば使用できる
・リファレンスがなくても任意の処理が記述できる
・リファレンスを見ずに、機能を自在に組み合わせて使うことができる
ベルジェールでは、子どもたちの理解度のゴールをつぎのように考えています。
■言語仕様と標準ライブラリーの一部を、リファレンスなしで使うことができる。
■アプリケーションに特化しない汎用的な処理を自在にプログラミングできる。
パイソンの壁
スクラッチからパイソンへの道には、3つの壁があります。
それはアルファベット、キー入力、視覚的な理解です。
■アルファベット
スクラッチでは、ブロックをマウスで動かすことによってプログラムを作りますが、パイソンではアルファベットと数と記号を使います。そのためアルファベットの大文字と小文字を読めること、そしていくつかの英単語を覚えることが必要となります。
・アルファベット : 大文字と小文字を書ける必要はありませんが、少なくとも読める必要があります。ただ小学5年生以上であれば問題はないと考えています。
・英単語 : パイソンでアルファベットを使うのは、予約語と組込関数と変数です。このうち、 変数はローマ字として表現すればいいので問題ありません。予約語は31程度あり、 知っておくべき組み込み関数は30前後あります。したがって約60個の単語のつづりと発音を覚えることが必要となります。これが生徒たちにとってどの程度の高さの壁になるのかまだ把握はできてはいませんが、大きな負担にはならないのではないかと考えています。
■キー入力
音声入力が将来社会に浸透するかもしれませんが、学校や会社で音声入力が主要な手段になるとは考えずらく、キーボード入力はこれからの社会においても必須スキルであり続けると思います。
そしてこれからの子どもたちが避けては通れないのは、タッチタイピングというキーボードを見ずにキー入力するスキルです。プログラミングは、タッチタイピングを直接必要とはしませんが、キーボードの配列を覚えるタイミングにあわせてタッチタイピングを練習したほうがいいと思います。
大人になってからはでは、なかなか身につけることが困難なスキルですが、子どもの場合は短期間で覚えることができるという事例も報告されています。
ゲーム感覚でタッチタイピングを身につけることができる無料ソフトがありますので是非とも身につけたいスキルです。
■視覚的な理解
スクラッチではキャラクターや背景が視覚的に理解できるにもかかわらず、パイソンのアウトプットは文字と数字です。子どもたちがこの変化をどう克服するかが問題となります。子どもによっては高い壁になるかもしれません。
この問題に関しても知見があるわけではないのですが、はっきりと言えることは子どもたちがプログラミングで自分の世界を切り開きたいという気持ちがあれば大きな問題とはならないと思います。
子どもたちはスクラッチを好きになれるか
子どもたちがパイソンを好きになっているかは、つぎのような兆候で把握することができると思います。
■カリキュラムの学習だけではなく、自分で目標をたて主体的に学んでいる
■問題意識を持って、パイソンのリファレンスを調べたり質問をする
■学習したことを利用して、アイデアを活かしながら発展的な作品をつくる
このような姿勢で自主的に学習を続けることができれば、プログラミングのクラスに通う必要はなく、独学で興味ある分野に進んで行くことができます。
質問をしたり、方向性を相談できる先輩や指導者が近くにいる環境があれば一層いいと思いますが。
プログラミングを含めコンピュターの世界は広大で深淵な世界です。教室で教わることは、わずかでしかありません。独学する姿勢こそが大切です。
べルジェールでは、2019年の1月に2名、2月から2名がエントリーコースに参加する予定です。
生徒たちが、パイソンを大好きになってくれると信じています。